LUZの熊野古道案内

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2009年 02月 25日

熊野の旅 雨の多い春先は・・・

 今年の春先はものすごく雨が多いです。
 大雨が降るわけではないですが、回数は異常に多いです。
 昔だと、山主は喜びました。 
 山働きの人は濡れますから嬉しくは無かったのですけどね。

 この時期は、杉・桧の植林の時期です。
 北の方ではまだまだ雪があったり、地面が凍ったりして無理ですが、ここ南紀ではこの時期に始まります。
 この地方では、桧の苗を植える作業でも。植林作業は『杉苗植え』と呼びます。杉のほうが古くから植えられたし、植林面積がはるかに多いからでしょうね。

 普通、野菜の苗でもバラなどの苗でも土を丁寧に掘り起こし砕いて、水をたっぷり与え、植え終わったらまた水をやります。
 そうしないと、つき難いからです。
 しかし、『杉苗植え』はその逆を行います。
 やたらと掘り起こさないで、『トンガ』(唐鍬)をガツンと打ち込んで、地面を少し持ち上げ、その隙間に根っこを入れ、そのままトンガを引き抜き。足で踏んで固めます。
 もちろん、一本一本水をやるなんてことは出来っこありません。
 普通の園芸指導家がみたら腰を抜かすような手法なのです。
 中国あたりの土しかない乾燥地に比べれば腐葉土もある日本の山地は少し入れば湿気は保たれることが多いです。
 しかし、そんな日本の山地でも、春先に乾燥が続くと皆伐して丸裸にした山では、1尺掘っても土煙が上がるほどになります。

 『杉苗植え』に従事する人たちはお百姓さんです。
 丁寧に掘り起こし、水もやれば活着しよいし、根の張りも早いのは知っています。
 しかし、江戸時代のには始まっていた『杉苗植え』の長年の経験から、その方法では駄目なのを知っています。
 掘り返せば、その後の乾燥が奥深くまで届いてしまう・・・
 広く耕せば、春から梅雨に掛けての豪雨で土が流出してしまう、場合によっては山腹崩壊の元にさえなる・・・
 根の数の多いしっかりした苗を育てておけば、少々の乾燥には耐えて雨を待つ力を杉や桧の苗は持っている・・・こんなことは知っているのです。
 だから、・・・
 「ドスッ」「グキッ」「ギュッ」「ドンドン」の動作で、鍬入れ・掘り起こし・苗の生けこみ・踏み固めを終えるのです。
 この単純な作業ですが、人によって活着率がずいぶん違います。下手な人のは枯れる率が高いのです。
 しかし、一番影響するのは春先から入梅までの日照です。
 大雨は要らないのですが、少しずつ降ってくれるとほとんどの苗が付いてくれるので、植え付けに時期から梅雨までの間の雨は山主にとってはありがたいものなのです。
 それに、成長期や成木の杉桧でも、新芽を吹いて大きく成長する時期に雨が降るとその年はよく伸びます。
 何百年も経った杉の木などを倒すと、ところどころ年輪幅が異常に狭いところがあります。
 その場所が天保の飢饉の年とかに当たるわけです。
 古文書を見なくてもその地域の飢饉の歴史が分かるくらい雨が大きく生活にかかわってきたのです。

 しかし・・・
 近年では今年のように春先に雨が降っても、それを有難がる山主も減ってしまいました。
 跡継ぎが都会に出てしまい、地元には居ない・・・地元で林業に従事し山林管理で生計を立てていた人も山では食えなくなってしまった・・・伐採した後に植林できるほどの金が大きな木を切っても取れなくなった・・・
 切らなくても放置、切っても放置・・・
 そんな状態では、自然の恵みにも目が行かなくなりますね。
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熊野市周辺地図です

by je2luz | 2009-02-25 12:18 | 熊野 | Trackback | Comments(0)
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