人気ブログランキング |

LUZの熊野古道案内

je2luz.exblog.jp
ブログトップ
2008年 10月 01日

熊野の旅 昭和34年10月 一眼レフ時代へ

d0045383_10564689.jpg

 多分、昭和34年10月4日の日曜日だと思います。
 熊野市飛鳥町小阪地区では毎年一番後の稲刈りになっていた我が家の稲が刈り取られて『さがり』にかけられています。
 このような稲を干す竿は日本中の田舎にあって、呼び方も様々なようですが、この地区では『さがり』と呼んでいました。
 刈り取ってから一週間ほどこうして穂を下にして乾かします。
 その間にまだ生きている茎や葉が一生懸命実の方に栄養を送るので、米が一層美味しくなるのだそうです。
 最近では、ハーベスタとか言う刈り取り機が刈り取ると同時に脱穀までやらかすのだそうですね。
 そして、有無を言わさずに人口乾燥へ・・・
 農作業は格段に省力化されていますが、米がまずくなったとお百姓さんは言います。

 9月から10月は秋台風の時期になります。
 大きな台風が日本を縦断する時期とも重なるので、毎年のように稲作に被害が出ました。
 実ってきた稲は穂が重くなり頭をたれるくらいですから、風が強いと倒れます。
 台風の風はくるくる回りますから、倒れ方もぐしゃぐしゃで手の付けようの無いようになったりします。
 手で刈るこの時代でもなんともならない時がありましたね。
 おまけに、雨が大量に降って、川からの氾濫などなくても田圃に溜まった水に穂が浸かります。
 洪水にあった田はそれこそ全部水の下になります。
 そして、刈り取りが終わっていても、この『さがり』が倒れて水の中へ・・・
 
 完熟に近い稲が煮ずに浸かると三日もすると種が動き出します。
 穂に付いたままで発芽しようとするのです。
 せっかく、美味しいでんぷんをたっぷり溜め込んだ米粒が、その発芽運動が始まると同時に変質して、一気に味が落ちます。
 そして、変質した米は自ら上げても元には戻らず、『籾摺り』・・・『精米』と、力を掛ける行程に入ると砕けてしまい、『米』ではなくなるのです。
 それだけに、台風が過ぎると、きれいな秋空を眺める余裕もなく、水浸しの田で、『さがり』を立て直し、倒れたい値を必死に刈り取るのが、被災した地域の風景でした。

 台風時期にたまに放送される、ザップリ水に浸かった水田の光景は、その先にそうした事態が見えているのです。
 ほぼ半年かけた稲作が徒労に終わる光景なのです。
 およそ、日本に稲作が伝わった時から・・・花の窟の神話の時代から・・・国を支えた百姓にはついて回った悲劇でしょうね。
 その分、無事に収穫できた年の嬉しさもひとしおだったでしょう。
d0045383_11245221.jpg

 この時代はこの写真にあるような『とうみ』などと言う人力の選別機が使われていました。
 脱穀も足踏み式の脱穀機に変わり、大昔からの櫛のような『せんば』と言う脱穀装置は種籾用にしか使わなくなっていました。
 『足踏み脱穀機』が発動機でまわされるようになりかけた頃ですね。
 ものすごく重たい発動機と平ベルト・・・機械化しても設営が大変な物でした。

 この後からは、ちいちゃな『耕運機』が導入され、ちいちゃな『稲刈り機』が作られ、『田植え機』まで出来・・・百姓の仕事は急速に機械化されました。
 その結果、儲けたのは農協と農機具屋・・・この辺のように三反にも満たない百姓は、米を供出した金では足らず、山で働いた金まで、農機具の月賦を払うのに注ぎ込む始末でした。
 なんだか、江戸時代の年貢似たいな感じもしますね。
 お代官様はお目こぼししてくれても、農協などは・・・
 かくして、日本の田舎から人が消え、百姓も居なくなって来ています。

 この写真の時代の頃が、戦争からの復興も大分進み、日本中が活力にあふれ出し、まだまだ田舎も元気で・・・
 田舎の主婦も『家の光』なんて雑誌を読むようになり、日本中の若者が『平凡』や『明星』で単純にスターに憧れる・・・希望に満ちた時代だったのかもしれませんね。

 カメラの世界では、スプリングカメラ、二眼レフの時代が終わり、新発売のニコンFを筆頭にした一眼レフ時代に入りました。
 その流れが加速し、今の無味乾燥な、人間不在でも写真の撮れる、全自動カメラへ進んだのです。
 進歩と言う名の破壊への入り口だったのかも知れませんね。

 カメラは ニコン F

熊野市広域地図です

by je2luz | 2008-10-01 11:55 | 熊野 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://je2luz.exblog.jp/tb/8696635
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]


<< 熊野の旅 猫の生活 昭和から平成へ      熊野の旅 昭和34年10月 F記念日 >>