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LUZの熊野古道案内

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2008年 09月 16日

熊野の旅 最近聞こえない・・・

 『トントントントン』、『タンタンタンタン』
 昔は今頃の時期の夕方、木本の町を歩くとあちこちから聞こえた音です。
 さしずめ東京の下町あたりで路地に七輪を持ち出しサンマを焼く風景が秋を告げたような物です。
 サンマを焼く方は、魚焼器などになって家の中に移っただけで今でもあまり変わらない秋の味覚でしょうが、こちらの音の方は・・・と言うより、この音が作り出していた秋の味覚の方はあまり食べられなくなったようです。

 その食べ物は、『アジのタタキ』です。
 この時期に地元で獲れる『豆アジ』の食べ方の一つです。
 大きさ三寸ほどの豆アジの頭や腸・皮を取り除いた物を骨をつけたままでミンチ状にする物です。
 ミキサーやミンサーなんてものを使わず、まな板の上で包丁を使って叩いて叩いて骨っ気が無くなるまで細かくするのです。
 すり潰すのとよく切れる包丁で際限なく細かくするのでは『鯵の味』が違ってきます。
 出来上がった『アジのタタキ』はちょっと透き通った灰色でお世辞にもきれいな物ではありません。
 気の利いた人は盛り付けに紫蘇の葉などを添えて格好付けますが、大体の『おばやん』(おばちゃん)はこいつをドスンと皿に乗せて出した物です。
 横にはこの時期に採れる真っ青なみかんか小さな柚子が半分に切って並んでいた物です。
 こいつを自分で絞って掛け、好みの濃さで醤油を掛けて食するのです。
 『鰯のつみれ』の鯵編で生食することが多かったのです。
 もちろん、鍋に入れたり、煮物にする家もありましたが、捕れ捕れのアジを叩いてミカン酢を掛けて生で食べるのが普通の食べ方です。

 新鮮な豆鯵が安く出回るから出来る料理です。
 少しでも時間が経ったものだと匂いが出てきて食べられません。
 見場はさほど良くない・・・そのくせ、何十匹場合によっては百匹を越すほどの豆鯵の下ごしらえは恐ろしく面倒です。
 料理には結構時間が掛かる・・・大体子供は喜ばない・・・
 だから、色んな食材が出回ってくるし、豆鯵も「天麩羅」だ「から揚げ」だと子供も慶ぶ食べ方が普及してくると『タタキ』の出番が減ってしまったようです。
 叩くのがしんどいと言うので使われたのが、ミキサーですが、こね回すので粘ってきて美味しくない。片付けるのが鯵をまな板で叩くより大変・・・と言うことでこれも駄目・・・たたきは美味しくないなんて余分な置き土産まで残したようです。

 この辺のスーパーではこの時期に『アジのタタキ』が出ていますが、ミキサー物か骨までをとって、軽く刻んだ偽物かしかないようです。
 そもそも、叩いて何時間も経ってから食卓に出す物ではないですね。

 かくして、今では一部のお年寄りや食通が本物のタタキを家で作って食べているだけの『郷土料理』になってしまいました。
 相変わらず、『豆鯵』は安くふんだんに出て来るのですがね・
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熊野市広域地図です

by je2luz | 2008-09-16 12:22 | 熊野 | Trackback | Comments(0)
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