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LUZの熊野古道案内

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2008年 09月 03日

熊野の旅 隣町 電源立地

 隣りの尾鷲市は旧尾鷲町を中心に昭和の大合併で周辺の村を吸収して三万人越えでいわゆる『新市』となったものです。
 尾鷲湾の奥にある中心部に人口も色んな機能も集中した形態の市です。
 三方を山に囲まれ、イヤ…ほとんど四方を山に囲まれ、場所によって、ほんの少し外洋が見えると言うような天然の良港にあります。
 従って、少し大きな船も付けよいし、あれるときも少ないので、遠洋漁業の船も入る大きな漁港になっています。
 そして、この良港と言うことを見込んで、大きな火力発電所が立地しています。
 国道42号線で北からであろうと南からであろうと尾鷲に入ると、まず眼に飛び込んでくるのはその巨大な煙突です。
 中部電力・三田火力発電所です。三田は「みた」と読みます。
 尾鷲には北山川から分水した水力発電もあり、街中を放水路が走っています。
 火力発電所に付随する形で、石油基地まであって、巨大な備蓄タンクも並びます。

 企業とか発電所とかを誘致し、港を整備すれば町が潤い、夢のような暮らしがある…と言われ、今でもそう思う節があります。
 それを言うなら、尾鷲市なんて狭い市街に、遠洋漁業まで扱う漁港があり、発電所があり、石油基地まであるのですから、市民はすごく楽なはずなんですがねえ・・・
 確かに、一時期、尾鷲市は熊野市よりずっと財政が楽でした。
 中部電力と下請け会社で発電所の職員をどっさり連れてきました。
 町中に社宅があり、結構まともな月給取りが住み着いてくれたから、商店街も潤ったものです。
 金遣いの荒い遠洋の漁師、安定収入のあるサラリーマン・・・
 町中が賑わった時期もあります。
 さらに、発電所があると、迷惑料代わりの『電源立地交付税』なんてのが結構高額降りてきます。
 中電も、何かあっておねだりに行けば、これまた迷惑料代わりに大金を寄付してくれた物です。
 こんな風に金が豊かに入ると使い切るのが『行政』なのです。
 ほぼ同じ規模の自治体に比べ職員数も増えます。
 これは、当年度主義の予算で動くシステムだと、ほんの少し『財政調整基金』などに積み立てるだけで使いきらなくてはならないと信じているお役人なら当然なのです。

 しかし、発電所なんかの税金で大きなのは固定資産税のほかにある『償却資産税』なんてどんどん減ってゆく物なのです。
 膨れた財政、減り行く税収・・・
 更には、技術の進歩で、うじゃうじゃ人間が居ないと動かせなかった発電所もコントロールパネルの前にぽつんと人を据えれば良くなってしまいました。
 点検業務なども徹底的に合理化しました。
 尾鷲の町から発電所関連の人間がほとんど姿を消しました。
 何百人もの安定した月給取りが消えたのです。
 商店街も飲み屋もさっぱりになりました。
 こうして、大きな発電所まである、小さな町が追い込まれていったのです。
 役所の職員数も当然減らしています。

 原子力発電ほど危険もない代わり、『口止め料』『危険手当』的な交付金も少ないです。
 その口止め料、危険手当のある町でさえ、膨れた財政、減り行く税収の図式から、原発の増設にどんどん応じていますね。
 尾鷲も閉じ込められた地形で、排気ガスの問題もあるのですが、三号機まででしょうか、増設しましたね。
 しかし、消費地からこんなに遠い所に『火力発電所』を作ったこと自体が不思議なのですし、もはや中電も関心はないでしょう。

 財政豊かな頃に作った『市民病院』もかつては三重大から医師が派遣されていたので、赤字とは言え運営出来ていたのですが、ここに来て例のごとく『医師不足』に見舞われ、マスコミでも騒がれたように二千万を越す給料を出すことに・・・それでも確保は出来ないし・・・
 第一、新任の医者にそれだけ出したら、今居る医者も黙っていませんでしょうしね。
 病院を締めるわけにも行かず・・・

 何だかんだで、上手く行くはずだった理想的な街づくりが追い詰められています。
 夕張なんか見たいにお夢追いで追い詰められて行った訳では無いのですがねえ・・・
 とはいっても、今でも熊野市よりは税収は上のはずなんですが・・・
熊野の旅 隣町 電源立地_d0045383_1131362.jpg


尾鷲中心部です

by je2luz | 2008-09-03 11:34 | 熊野


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