熊野古道関連の書籍は世界遺産指定の頃からたくさん出されてどっさりあるのではないかと思います。
ことに、和歌山県側の『中辺路』とかは、記録も多く残っているのでものすごく多いと思います。
『熊野参詣道』でも、通った人の数や有名人の数では少しマイナーな『伊勢道』の方はそちらに比べれば少ないでしょう。
ブームにあやかって作られた物ではなく、売れないのを覚悟で作った本の中には、地元ならではのことが載っていて、大手出版物には無い面白さがあったりします。
私の手元にある、『金山の史話』なんて本も、その一冊です。
発行が『金山発行委員会』などと言う、不思議な団体です。
著者は 岡本実 さんで、美術の先生だった人です。
発行は1991年、岡本先生の晩年の物です。
定価5000円、724ページと言う立派な物です。
随所に入れられているのは、写真と、絵描きだった先生のスケッチです。
文章はものすごくやさしい口調で書かれたもので、熊野古道や熊野に関心のある方の目に止まれば、おそらく大喜びで買われる物だと思いますが、こうした自費出版の本はもう手に入らないのでしょうね。
この『金山』(かなやま)とは、熊野市の南の外れの山際にある集落です。
かつては、南牟婁郡神志山村に所属していました。本来なら、今の御浜町に入るはずなのですが、隣接する久生屋地区と共に、昭和32年、竹やりを持って警戒したと言うほどの大騒動の末、分村して熊野市の編入してきました。
この『金山』の区長(久保力)さんをはじめとする有志の方が委員会を作って、本の発行元になったのです。
今では、岡本先生や委員長さんもなくなられて直接お話を聞く事も出来ませんが、立派な本の形にされたので、これからもずっと残されてゆきます。
ただ、先ほども書いたように、こうした自費出版の本は本当に欲しい人のところにたどり着かない物なのでしょうね。
この本も、たまたま頂いたので手元にあるのです。
せっかくあるのですし、この本から題材を拾わせていただこうかと思います。
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