熊野古道歩きにこの町を訪れた人ならお気付きになったと思いますが、木本の町屋ではところどころに格子の入った家があります。こうした、表通りに面して格子を入れた造りは全国の古い町に見られます。防災の面と目隠しの面を兼ね備えたものです。
蒸し暑い日本の夏には家を開け放す必要があります。吉田兼好は『夏を旨とすべし』と、書きましたがその通りです。
格子戸は目隠しとしての働きが結構あります。特に昼間は外を通りかかってもほとんど中は見えません。ヨシズをたらしたのと同じことです。昼間は外が明るく中が暗いからです。
夜になると逆転してしまいます。中のほうが明るいので結構見えてしまうのです。これも、レースのカーテンやヨシズと同じです。中の明かりを消せば目隠しは生きてきます。そして、開け放していても格子は誰も入ることを許しません。
こう書くと、格子の入った家はすごく良いことだらけに聞こえますが、実際済んでみると、昼間でも室内が暗くて陰気なものなのです。軒の深い昔の建物にくわえ、開口部の半分が格子の木でふさがれた勘定です。当然暗くなるのです。開放感はあまり感じられず、閉じ込められたような感じを受けます。
今は蛍光灯などで室内は明るく出来ますが、それでも昼間に自然光の不足は現代人には向かないようです。
夜になり、外から見たときも、昔のように白熱灯の薄ぼんやりした暖かい光の方がこうした建物には似合うようです。
カメラは
フジカST605N+Cクルタゴン35mm
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