世界遺産指定に関して行政の独りよがりだったことが表面化した例として尾鷲市内での山林所有者とのトラブルが報道されています。
道本体は『赤道』で万人に通行権が認められているものでも、ほんの3尺離れれば民間の土地です。更に、この道自体はこの百年ほどはハイカーも通らないものでした。歩ける程度に維持してきたのは地元の林業家です。
都会の人にとっては無関心でしょうが、国立公園指定とか魚付き林指定とかされると個人の権利が随分制限されます。都市部での建蔽率の制限強化とか高さ制限強化、風致地区指定強化などと同じで当事者にとっては大変厄介なものなのです。
尾鷲だけではなく各地で事前説明とか了承とかはきちんとなされていません。たまたま尾鷲で火を噴いただけです。林業のサイクルは50年とか80年とかの長いものです。しかし、そのときになって伐採しようとして、本当に自由に伐採できるのか?と言う問題があります。
しばらくすれば世界遺産も又忘れられて観光客がうろつくことは無いかもしれませんが、条例とかが生きていれば従わなくてはなりません。少なくとも、指定の無い道で人のとおらない山の中の道であれば伐採作業のときに一時的に通れなくても問題は何もありません。そして。出財の時に架線が上空を横切っても問題ありません。長年こうしてやってきています。しかし、世界遺産指定されたとなれば下線が通る部分にガードを作らなくてはなりません。昔なら足場丸太で組んで架線が垂れ下がってもあたらないものでよかったのですが、こうなると鉄骨で組んで材木が万一落下しても耐えうるものにしなくてはなりません。大変なことです。今の材木の価格でしたらそれだけで赤字になります。
こうしたことへの配慮がまったくなされていないのが今の世界遺産指定の現状です。たまたまそこに山林がある、若しくはそこを通さないと材木が出財できない人には死活問題なのです。
宅地を売ることも建て替える事も禁じて補償はなし・・・と言うことです。
予定された条例改正ですら地権者と当局の話し合いが不十分なままでの見切り発車だったので議案の提出も見送られました。
山あっての熊野古道です。破壊、崩壊から守るのが筋で観光などは付随するものに過ぎないと思うのですが・・・『世界観光資源』だはないのですから・・・