人気ブログランキング |

LUZの熊野古道案内

je2luz.exblog.jp
ブログトップ
2011年 11月 02日

熊野の旅 先人の苦労 木本堤防 2

 昨日の続きですが…

 木本という町は古くから水に苦労しました。
 何しろ表面こそ土混じりですが、ものの50cmも掘れば砂利だけの七里御浜の延長そのものなのです。
 おまけに、この土地は天橋立のように海流に流された砂利が滞積し積み上がって背後地の方が低いという物です。
 たまたま背後とも干上がったので浜から山までほんの少しとはいえ平地が出来たのです。
 この先、熊野川河口までの七里御浜で直接山がせり出した場所以外で山まで陸地という所はほとんど無いのです。
 浜筋があって一段下がって沼があってその先が山という地形です・
 木本も浜筋より背後地の方が3~4m低いですね。

 こうした地形と土質ですから、山からの地下水は背後地を過ぎる頃には深く潜ってしまいます。
 おまけに、波打ち際まで地下は砂利ですから、少し波が荒れて浜の中程とかまで来ると潮水が逆流してきます。
 昔の手堀りでは崩れるので井戸は掘れないし、うまく掘れてもこんな状態です。
 さらに、下が砂利だと言うことを利用して木本では下水を浸透式で始末して来ました。
 土でも砂でも無く砂利ですから目詰まりしにくくてうまくしみこむからです。
 つまり…井戸の水が非常に危ないのでもあります。

 これを、山から木で作ったり竹と使ったりの樋を繋いで水を引いてようやく浜筋に人が住みだしたのです。
 でも、目の前は熊野灘、台風銀座です。
 地震は100年に一度とかですが、台風の方は毎年のようにやって来ます。
 奥熊野代官所とかの記録でも、「大風」「時化」にの記録だらけです。
 松原は木本の裏にもあって風と少しの波は防いでくれたのですが、内海のような堤防では防げない高波なので防ぐのは難しかったようです。

 写真の石積み堤防はもっと古くから作ったでしょうけど、「空積み」の石垣では弱かったでしょうね。
 この堤防のように石とセメントでがっちり作ってやっと持ちこたえたのだと思います。
 でも、私が覚えている比較的新しい台風でも、「ジェーン台風」「キティ台風」「キャサリーン台風」「室戸台風」「第2室戸台風」「狩野川台風」「13号台風」「19号台風」…「伊勢湾台風」
 戦後だけでも大木なのはこの倍はあるでしょう。
 女性名のは戦後米軍が支配していた頃の物です。
 地名の入ってのは甚大な被害を出した物で上陸地点の名前をかぶせた物です。
 四国へ行こうと静岡に行こうと、直撃ほどでは無いにしてももみくちゃにされるのが紀伊半島南部です。
 名も無い台風でも、「潜堤」が出来るまでは今の堤防に波が当たって家が揺れた物です。

 木本の海側の家には石垣を備えた物が多く、浜側の道は店など構えられない「裏通り」だったのです。
 家並みと堤防の間は、細い道と芋畑とか納屋しかなかったのです。
 伊勢湾台風の後で、今散り壊している堤防が完成し、昭和45年頃に国道がここを通るようになってから、ほとんどの家が石垣を外し、店もこちら向きに開くようになりました。
 万全では無くても、一見、安全になりましたからね。
 更に、新堤防が作られるし…
 人々は「安全になった」と思ったらしいです。
 私の家は石垣を残してあります。少しは役立つでしょうからね。

 新堤防は全部が完成するまでに、私達住民が予想したとおりに波が越えることになったのです。
 県の技官などが「伊勢湾台風級でも大丈夫」と太鼓判を押した新堤防が名前も番号も付けられない「台湾坊主」に負けたのです。
 「だめ!危険!」と言う浜通の住民全戸の有印陳情書があったので、県、国も無視も言い逃れも出来ず、さらには運輸省の技監がたまたま木本海岸のかつての姿を知っていて気に入っていたという幸運にも恵まれて、「木本港湾」…つまり、木本の沖合に「潜堤」が出来たのです。
 日本では海岸浸食で何百メートルも海岸線が後退した所があり、国道の付け替えや町の引っ越しまでしているのに、こんな産業的にも重要性の無い所が守られたのは、努力と幸運のたまものでしょう。

 しかし、広域で偉いさんをかませての運動は格好良くても実効性に乏しいので、たった二人の市民と、直接浜に面した家の120人ほどの署名とはんこで勝負したのです。
 ここまで絞れば、利害なんて無しに意思の一致は見ますからね。
 まさに、命の掛かった陳情でした。
 その時からの国の方針…旧堤防の撤去が25年ほど経って着工しているのです。
 そして…
 今回も危険性を指摘して「有印の陳情書」を出したのですが、老齢化と過疎が進んで、全戸回っても42名の署名しかありませんでした。
d0045383_1074938.jpg

カメラは MAMIYA RB67 セコール65mm + TRI-X D76二倍希釈現像

 
熊野市周辺地図です
 

by je2luz | 2011-11-02 10:16 | 熊野 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://je2luz.exblog.jp/tb/14868378
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]


<< 熊野の旅 飛鳥神社の祭り      熊野の旅 先人の意気込み 旧木... >>