熊野物、「たかな漬け」「めはり寿司」の原料は、「高菜」です。
冬野菜で、温暖な気候よりは霜が降りるくらいの寒い所の方が美味しいのが育ちます。
私の住む海のそばでは、ものすごく機嫌よく伸びます。しかし、辛味や葉っぱの厚みでは山間部のいじけたような高菜に勝てません。
朝鮮人参ほどじゃないにしても、温暖な所ですくすくと育ってはいけないようです。
普通の漬物ではなく、「めはり」の場合は、それだけで握ったご飯を食べなくてはならないので、漬物の味がものすごく問題になるのでしょうね。
名物にする前から、「高菜」は一杯栽培されていました。
辛味のある葉っぱだし、冬場に作るので虫に食われることの少ない野菜です。
昔は「白菜」を玉にするのがむずかしかったし、霜にも弱いので山間部の冬野菜は「高菜」と「ネギ」でしたね。
高菜には茎?筋?の太いのと細いのがあります。
漬物にしたとき、茎の太いのは細かく刻んでもシャキシャキした食感があるので好きな人も居ます。
高知から来る古漬けなどにはこれが見かけられます。
熊野でもこれを作る人も居ますが、「めはり」にする時はこの「筋」は邪魔です。
筋があったのではとてもじゃないが噛み切れません。
昔は一般家庭でも沢山作って、大きな樽に漬け込みました。
冷蔵庫や冷凍庫なんて無いのですぐに発酵が進んで、鼈甲色になりました。
浮いてきた漬け汁も白く乳酸菌の膜が張ったものです。
独特のにおいもあるし…
今では、「通」の人しか口にしなくなったようです。
綺麗な緑の「新漬け」と鼈甲色の「古漬け」があるのですから、『めはり寿司』も両方あるのです。
でも、今では「めはりは青いもの」と、思われているようですね。
テレビなどでの紹介も「緑のめはり」ですね。
どうせなら、目茶目茶癖のある「茶色いめはり」を「食通」と言うタレントに食べさせれば良いのに…
そして、その横には、あの、「薫り高き・なれ寿司」を並べて…
これが、紀州の食べ物だったのですからね。
高菜の栽培、漬物の製造には色んな団体もあるようです。
物産振興会に入っているのはこの「熊野たかな振興会」です。
長年、推進した作物ですが、栽培面積が増えないうちに山間部の高齢化と過疎が進んでしまいました。
これが田舎の産物の実態なんですが、あまり外に走らされていないようです。
熊野市周辺地図です