物産振興会には魚の加工業者・販売業者の他に「網元」も入っています。
もう、地引網と言うものは姿を消していますから、今入っているのは「定置網・大敷」の網元です。
最近は、この「網元」と言う呼び方もあまり耳にしません。
最近では「定置網」と呼ばれることが多いですが、以前は「大敷」のほうが多く使われていたように思います。
この漁は名前の通り、決められた場所に大きな網を張り巡らせ、回遊してくる魚を捕ろうというものです。
潮の流れを遮断するように長く伸ばした「道網」で魚の向きを変え、袋状の網の方に誘導する漁法です。
狙うのは「マグロ」「鰹」「鯖」太刀魚」「カマス」…何でもござれみたいな感じです。
陸から見ると広い海の上ですからそんなに大きくは見えないですが、沖合いに竹竿などは立っているのが大敷の目印です。
そして、その位置はきちんと海図に載っています。
船がこれを巻き込むとスクリューに巻きついて航行不能になることもありますし、網の方の被害も一千万円を越すことになります。
海図に正確な位置が載るくらいですから、網を貼る位置はきちんと決められており、ずれることは許されません。
ここでは黒潮に乗って回遊してくる魚を狙うのですが、この黒潮と言うのは随分通る場所が変わってしまいます。
他の漁法は魚群探知機などを使って魚の群れを追いかけますが、「大敷」はじっと我慢の子をしています。
流れの悪い年だと、全く魚が乗ってくれません。
台風が来る前には、網を沈めるか完全に陸に上げるかしてやり過ごさなくてはなりません。
一度あげて、張りなおすと、何百万…
でも、大丈夫だろうなんてたかをくくっていて、流されたら、何千万にも成ることもあります。
漁業って、かなり博打的な要素が絡みますね。
おまけに「潮来一枚下は地獄」などといわれたこともある、命がけの職場にもなりますしね。
気が荒いくらいで無いと勤まらないのかもしれません。
「恵洋水産・恵洋大敷」は熊野で一番大きな網です。
サンマ漁とかの船と違い、大隈網を巻き上げますから、平たくて大きな船を使っています。
この大きな網の修理や点検には広い場所が要ります。
熊野には七里御浜があるのでこの広い砂利浜を使います。
獅子岩のそばの浜に広げられていることがあります。
学校の運動場に入らないほどのものです。
いまは重機を使って上げ下ろしや広げる作業をしていますが、少し前まではこれを人力でやったのです。
漁師がマッチョで色が黒く気が荒い…当たり前だったのでしょうね。
今は昔のような真っ黒な漁師さんが減ったように思います。
熊野市周辺地図です