熊野の人の好きなものに、「生節・なまぶし」があります。
「なまりぶし」などと言う呼び方もするそうですが、本場で「なまぶし」と呼ぶのですから「なまりぶし」は標準ではなく訛りでしょう。
まあ、親父ギャグはおいておくとして…
「生節」には二種類あります。
茹でただけの柔らかで、ボロボロ手で欠いて食べる物と、燻製にして少し乾かしたものです。
二番目のものは出荷の時に真空パックして日持ちするようにしたものが多く、他の町ではこの形で店に並びます。
地元では「生茹で」の物、燻製にしたままで真空パックしない物、そして真空パックした物の三種類が並びます。
旬になると、結構使い古した「木のトロ箱」に新聞紙など敷いて「裸の生節」を入れて並べてあります。
どう言う訳か昔からそんな扱いをする魚屋が多かったし、その日に出来たものを売るのですからその方が「らしく」見えるのです。
綺麗に並べれば新鮮に見えるというものでは無いですね。
町中の魚屋とか都会のスーパーになると、そんなスタイルでは不潔に見えちゃうのかもしれませんけどね。
それに、新しくないものを新しく見せる工夫もあったのでしょう。
この「生節」は磯崎で作られるのが多かったし、今でも磯崎で作られています。
その中の一軒に「向井商店」さんがあります。
磯崎港から少し登ったところにあり、せっせと「生節」を作っています。
熊野市物産振興会のフォトフレーム用の写真を撮りに行った時も、家内労働で生節の仕上げをやっていました。
一本一本手作業で余分な血合を削り形を整えてゆく地道な作業です。
地場売りよりも他所に出す時はそんな所にも気を使うようです。
出荷側が気を使ってそんな商品に仕上げるようになったのか、消費者が要求したのか分かりません。
消費者の声なんて聞こえてきませんから、途中の業者さんがそんな風に要求した面が大きいのでしょうね。
野菜などもほんの少し不揃いだったり、かすかに曲がったりすると駄目だといったのも、仲買いだとかスーパーのバイヤーだったのですからね。
最近では、「コンサルタント」の類がやたらと「都会の人に受ける商品作り」などと入れ知恵をしたがるようです。
おかげさんで綺麗にパッケージされた気の効いた特産品が増えて、どれも目立たなくなっています。
そして、味の方も????
この生節も本来はこうした「片身」のものなのですが、真ん中の血合を抜いた「1/4身」のパック物が出ていますね。
そんなに上品にしたのに、売り先は「ニャンコちゃんの餌」なんて始末です。
生節は元々高い食品です。
なのに、最近の都会人には「ペットフード」に見えるようです。
おかしな時代ですね。
猫に「ネコマンマ」を食べさせたり叱られるのだとか…
猫に塩辛い干物を食わせるのも、成人病??成猫病??になるからだめだと怒るとか…
まあ、生節は削って醤油か酢醤油をかけて食べればよいのです。
箸でつついて細かくしたのをご飯にまぶすと美味しいです。
ただし、ご飯の少ない時はやめた方が良いですよ。
二膳くらいご飯が余分にいりますからね。
熊野市周辺地図です