鵜殿駅を出ると列車はみかん畑や民家の間を進んでゆきます。
次の駅は『紀伊・井田』です。この井田(いだ)については、海岸浸食のことで少し前に取り上げました。
三重県南牟婁郡紀宝町井田というように紀宝町に属しています。もうすぐ、鵜殿村と合併する手はずになっています。
ここは昔から、半農半漁の集落でした。山が迫っているため水田がほとんどなく、小さな集落でしたが、近代に入り、鵜殿村の紀州製紙が出来ると共に、その住宅地として少し大きくなりました。
この駅は単線区間の特急通過の無人駅ですし、駅舎も小さいので特急に乗っていると気が付かないままに通過するかもしれません。地元でも、通学の高校生以外はほとんど利用されていません。
かつては、通勤や買い物にも利用され、結構賑わったものです。こうした、淋しい駅は全国のローカル線どこにでもありますね。
このあたりから熊野市駅までの間は、車窓、手の届きそうなところにみかんがなっています。温州・甘夏・八朔・セミノール・・・実に色んなみかんが植えられています。
気候温暖で非常に甘味の強いみかんが採れる地域です。産出量が少ないので都市部ではあまり見かけないでしょうね。
みかんも、昔のように高値で売れるわけでもなし、『みかん御殿』などという言葉も死語になっています。
採算の合わないみかん農家を継ぐ人もなく、地元企業や自治体に就職できた人以外は地元には残っていません。当然のこととして、急速な老齢化が進んでいます。
これも、全国何処にでもある現象ですね。
気候温暖ですから、老人が住むには適しているとも思われます。特に受け入れ施設があるわけではありませんが、個人的にこの南紀に土地を求めて移住してこられる方も居られるようです。都会の感覚からすると土地はやはり安いですからね。