よく、『ふるさとの味』だとか言う言い方をしますが、この『味』とはどれを言うのでしょうね。
熊野市で昔から今まで郷土料理の代表とされているのが『サンマ寿司』です。
何でも寿司にしてしまう土地柄ですから、『カマスの寿司』『ウルメの寿司』『キスの寿司』など色んなものが作られてきました。
たしかに、上に載っている肴は同じ『サンマ』でも、出来上がった寿司は、スタイルから味まで、随分差がありました。
大体において山間部の方が『酢』が良く効いてすっぱいものが多かったようです。サンマが白く綿のようになっているものもありました。寿司飯もそうした家のものは酢が良く効いています。
冷蔵庫のない時代に、寿司菜としてのサンマを届けるのに、きつい塩をして運んだため、塩抜きをして酢で絞める時に酢が強くなった面もあるでしょうね。
地域性だけでなく、同じ地区でも家庭によって、全く違った料理とも思えるくらいの差がありました。
子供の頃は『サンマの寿司』など、あまり好きではなかったので、よその家で出される、味の違いが余計も気になりました。
このように、ものすごく違うのが家庭料理であり、はたして、何をもってその地方の『郷土の味』とするかは難しいでしょう。
今の世の中は、既製品のお惣菜の類が甘くなっています。『甘い』と『旨い』は同義語だったとか言いますが、随分甘いものが増えています。
その流れの中でしょうか、ここ熊野の『サンマ寿司』も既製品に関しては今のものは少し甘めですね。そして、酢の絞め方も弱くなっています。これは、業者間でのさも結構ありますね。
『酢』にしても、『ゆず』をふんだんに使う人、『ぽんず』を使う人、『穀物酢』だけの人・・・気分によって使い分ける人・・・まさに多種多様なものでした。
昔のものは、概して大振りで、今のように、寿司飯がサンマの中におとなしく納まっては居ないで、おおきなご飯の塊の上にサンマがひしゃげたように張り付いているものもありました。
そうそう、よく酢の利いたサンマの頭は火鉢であぶって食べるものだったのです。それが、正統派だったような気がします。
ただ、私は苦手でした。